芸術の秋、美術館へ行こう!!
と言う訳で、ミニ企画に合わせて少し美術史を説明してみます。
(絵の画像はクリックで元サイトの大きいサイズで見えます)
さて、今でこそ、芸術の国といわれるフランスですが、一体何時からそう看做されるようになったんでしょう?
初めからそうだったの?
いやいや、そんなことはありません。
今回は、フランスの芸術家で、ちょっと有名な人が現われ始めるバロックのお話。
①そもそも、バロックってなあに?
まずはこちらの真珠の飾りを、ご覧下さい。
この真珠、真珠では有りますが、球体ではないですよね。こういった、球体ではない真珠のことをバロック真珠と呼びます。(宝石に詳しい方は知ってるかもしれませんが)
これがバロック芸術の語源です。
②じゃあ絵にしたらどうなの?背景は?
まず、この時代の一つ前、ルネサンス期作品をどうぞ
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ラファエロ作 聖母子 |
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ラファエロ作 キリスト降架 |
ラファエロは、ダ・ビンチやミケランジェロより若く、彼らの技法を吸収したと言われますので、代表として、絵のチョイスは、後の画家も同じ題材で描いているからです。
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カラヴァッジオ作 ロレートの聖母 |
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ルーベンス作 キリスト降架 |
作者の説明は後回しにするとして、上下で比較してみて如何でしょうか?
ラファエロの、作品が割と均一に、光が当たっているのに対し、バロック期の作品では、暗い背景に聖母やキリストにスポットライト的に強い光が当たって、神々しさが強調され、人々もそれをサポートするポーズや動きをしているのがお分かりになるかと思います。
このトレンドの時代背景は、 一つに、宗教改革が有ります。
それまで、宗教がキリスト教カトリック派がずっと支配してきましたが、 長く支配が続いたため、権力の巨大化や腐敗が進んでいました、そこで、ルターがキリスト教の本来のあるべき姿を説き、これがプロテスタントとして、新たなトレンドとなります。
こうした流れに、対抗するため、カトリックは芸術に力を入れ、当時字が読めない人も多かったことから、ドラマチックなシーンや強い明暗表現による、インパクトのある絵画によって信者の獲得を目指します。
(一方で、プロテスタントの国では、フェルメールやレンブラントのように、落ち着いた現実的な絵が好まれます)
③その頃、フランスでは
中世のフランスは紛争や戦争に明け暮れ、中々統一されず芸術の世界でも取り残されています。
そんな中、太陽王ルイ14世によりフランスが統一され、ようやく安定した基盤の元芸術にも力を入れ始めます、が、傾向はややバロックというより、ルネサンス的で、ヨーロッパ世界においてスターになるような画家はまだ出てきません。
この時代のフランス人画家の作品
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ラ・トゥール作 悔い改めるマグダラのマリア |
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ラ・トゥール作 聖ヨセフ |
ラ・トゥールの場合は、外からの光ではなく、ロウソクやランプで絵のうちからの光、この人はかなりバロック的ですね。
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プッサン作 聖母の死 |
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プッサン作 アルカディアの牧人達 |
あまり、フランスにはいなかった人で、殆どフランスにはいませんでした、太陽王はお気に入りだったようですが、ルネサンスっぽいですね。
④ギャラリー
個人的な好みでの作品のまとめと、作者の人生を軽く。
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カラヴァッジオ作 エオマの晩餐 |
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カラヴァッジオが描かれた10万リラ札 |
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カラヴァッジオ作 聖マタイの招命 |
元祖バロックのカラヴァッジオですが、天才的な宗教画家である一方で、普段の素行が悪すぎるという、真逆のような二面性の持ち主です。
問題を起こしては、別の地へと移る人生で、最後はその素行の悪さゆえに行き場を失い野垂れ死に。
後にその後の芸術への影響を評価され10万リラ札に描かれることになりますが、その際にも、彼の性格が問題となります。
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ベラスケス作 バッカスの勝利 |
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ベラスケス作 教皇イノケンティウス10世 |
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ベラスケス作 鏡のビーナス |
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ベラスケス作 ラス・メニーナス |
スペインとして活躍した、ベラスケスですが是非拡大写真でみて下さい、かなり荒い筆致が離れて見ると本当に質感が感じられる凄さが分かるかと、印象派にも通ずる所が有りますね。
宮廷画家でも、王家の人々や上流階級だけでなく、道化師に目を向けたり、バッカスを普通の人になぞらえて書くなど対象や表現の幅も広いです。
ラス・メニーナスは彼の最高傑作であるだけでなく、集団肖像画史上最高とも言われる位有名な作品なので、覚えておくと良いかもしれません。
画家では有りますが、王の信頼も厚く、役人としても高い地位を得ます。
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ルーベンス作 三美神 |
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ルーベンス作 自画像 |
上で幾つか紹介したので、少なめですが、次の時代であるロココにも大きな影響を与えます、また、出身はフランドル地方で、そこからルーベンスに憧れた少年の話として、「フランダースの犬」が良く知られています(最後のシーンはルーベンスのキリスト昇架/降架の飾られた教会)
画家としてのみならず、外交官としての顔も持ち、大規模な工房で作品を描きます。
複数の物事を同時にこなすような、かなり多忙で、また、多彩な人であったようです。
晩年は引退し、家族とともに過ごしますが、奥さんが50代の時に亡くなり、16歳の少女と結婚するなどちょっと驚きの話も有りますが、亡くなった後は自分の絵飾られた教会で眠っています。
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レンブラント作 放蕩息子(レンブラントとサスキア) |
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レンブラント作 夜警 |
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レンブラント作 ゼウクシスとしての自画像 |
様々な人になりきり、その自画像を多く書いたことでも知られるレンブラント、光と影の画家とも称されます。
私生活においても光と影という感じで、画家として成功し始めた頃に、金持ちの娘と結婚し更に地位を高めます。
工房を作り、数多くの作品を世に送り出す一方で、自分の作品を買い集めて、需給バランスを崩し、その価値向上を図ったり、様々なものをコレクションしたり。
しかし、晩年に近づくと、英蘭戦争の開始で、オランダの景気が悪化、過去の放蕩生活もたたって破産、裕福な生活に戻ることなくこの世を去ります。
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フェルメール作 小道 |
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フェルメール作 恋文 |
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フェルメール作 とりもち女 |
家は、オランダのデルフトと言う街の宿屋です、とりもち女は、それに関連した絵とも言われています。また、10人以上子供がいたようです。
絵を書く際に、カメラの原型となったカメラ・オブ・スキュラと呼ばれる装置を作ったことでもしられています。
特徴的な青色には、ラピスラズリという宝石を粉にして使うなど、裕福でしたが、こちらも英蘭戦争のあおりで、借金苦、失意の中でなくなります。
作品数は世界で30点未満とかなり少ないです。